気遣いと思いやりが人を動かす。イベント成功を支えるバックサポートの仕事
羽生未央

HABU MIO羽生未央

ルーツ・スポーツ・ジャパンでバックサポートを担当する羽生未央は、設立当初から会社を支えてきた一人です。決して華やかではないバックサポートの仕事を、羽生は「とてもやりがいがある」と語ります。数百人から、時には数千人規模のイベントを成功させるために欠かせない「気遣い」と「思いやり」の大切さ、そして「人の手でしか作れない価値」を提供するバックサポートの仕事の魅力を聞きました。

裏方でイベントを支える重要な役割、バックサポート

ルーツ・スポーツ・ジャパン(以下、RSJ)において私は、「バックオフィス」と「バックサポート」という2つの仕事を兼務しています。バックオフィスとは、総務・労務・経理など一般企業で必要とされる機能のことです。一方、バックサポートは、イベントやプロジェクトを回すチームの下で、横断的にサポートをする機能です。

バックサポートの仕事は多岐にわたります。日常の業務としては、事務や雑務的な作業が多いですね。アンケート集計やイベントに必要な備品の準備・発送など、プロジェクト内で発生する庶務の仕事を一手に引き受けて行います。そうすることで、各プロジェクトのメンバーが自分の仕事に集中できるようなサポートをしています。

時には、イベントの現場にも入ります。単日型(1Day)の大型イベントに行く際には、事前に社員と打ち合わせをしたうえで、当日は外部のパートナー企業やアルバイトスタッフとも協力しながら、現場が円滑に回るように動きます。

チーム一丸となってイベントを作り上げる喜びは大きい

 

RSJのメンバーとして初めて関わったプロジェクトは「COP15 CYCLING TOUR デンマーク大使と走ろう、エコサイクリング。」と題された国際イベントです。駐日デンマーク大使が、北海道から宮崎まで9ヶ所を自らがサイクリングして回るという企画に、RSJとして支援に入っていました。

私は大使が訪れる現地に一足早く向かい、参加者リストを作り、参加者に配るTシャツを受け取り、受付をしてイベントを催行するという形で、スーツケース一つを持って全国を駆け回りました。そのイベントはとにかく大変で、なんとかつつがなく完遂しなければと必死でした。でも、本当に面白かったんです。メンバーみんなでへとへとになりながらも、大きな文化祭のような感じで一丸となってイベントを成功させることができました。

現在も私を含めたバックサポートチームが、さまざまな形でイベント運営を支えています。

気遣いと思いやりがイベントの成功を左右する

バックサポートの仕事で最も大切なのは、「気遣い」と「思いやり」です。イベントの準備をするときに、「たとえ自分の手間が少し増えたとしても、こうすれば現場メンバーや参加者数百名の手間やトラブルが減るのではないか?」という視点を持つことがとても重要です。

単日型(1Day)イベントの備品の準備をするとします。特に大きなイベントでは、小さなミスが大きな影響を与えることがあります。たとえば、駅伝大会のたすきが入れ違っていたり、ゼッケン番号と記録計と紐づけるためのタグがずれていたりすると大変なことになります。例えば、800枚のゼッケンとタグを1個ずつずれた状態で配ってしまったら、全部ずれたタイムが記録されてしまいます。1つの確認不足が命取りになる。そう考えると恐ろしいですよね。

こういったことを防ぐためには、コミュニケーションがとても大切です。黙々と作業するだけではダメで、各イベントやプロジェクトのメンバーと密にコミュニケーションを取る必要があります。「これでいいのかな?」と気になった時に、「イベントメンバーは今忙しそうだからいいや」と確認を怠ってしまうと、取り返しのつかないことになるケースもあるからです。

イベントは「準備が80%」。だからこそ、バックサポートの役割は非常に重要な仕事なんです。

「AIでは作れない価値」を作るやりがい

最近よく考えるのは、AIをはじめとするテクノロジーが発展・浸透していく中で、「AIには作れないもの」の価値です。たとえば、物理的な「土地」や「建物」は作れません。それだけでなく、「過程」や「思い出」もAIには作れないと私は思います。

そしてまた、私たちバックサポートの仕事も、まだまだAIに対応できない仕事がたくさんあります。最後の最後は「人の手」が必要です。その意味でも、この仕事のやりがいは大きいですね。

この仕事に向いている人は、目先の作業だけではなく、それを行う背景や目的を理解しようと心がけられる人です。参加者への発送物の封入やイベント備品の発送など、地味で細かい作業を大量にしなければならない場面もたくさんありますが、「このイベントを良いものにするために、今この仕事が必要なんだ」ときちんと理解できる人が活躍している印象です。

また、自ら仕事を探していく姿勢も大切です。業務が振られるのを待つのを待つのではなく、「この日にこのイベントがあるなら、今からこれをしておいた方がいいな」などと考えて自分から動ける人がバックサポートには向いています。

そのような感覚をつかむには、イベントの現場に顔を出すのが一番です。たとえばサイクリング大会で、当日どのように数百名の参加者にゼッケンを渡しているのか、その姿を実際に見た方が、その後より良いサポートにつながります。

「縁の下の力持ち」というほど偉そうなことは言えませんが、バックサポートはイベント成功に不可欠な仕事。やりがいを感じながら動ける人と一緒に働きたいですね。私たちと一緒に、気遣いと思いやりでイベントを成功に導く仲間が増えることを楽しみにしています。

 

【聞き手・執筆/落合真彩(フリーライター)】