

TAKEUCHI NAOTO武内直人
「自転車の魅力を多くの人に伝え、サイクリストを増やしたい」という情熱を胸に、ルーツ・スポーツ・ジャパンのコースクリエイターとして活躍する武内直人。コースクリエイターは、全国を巡ってサイクリングコースを造成するスペシャリストです。自転車への情熱が入社の扉を開いたと語る武内に、入社の経緯やコースクリエイターのやりがいなどについて聞きました。
大学時代に京都へ一人旅に行ったことがきっかけで、自転車に乗るようになりました。たくさんの観光スポットを、交通費をあまりかけずに回るための移動手段を探していたところ、レンタサイクルが目に留まったんです。「自転車なら時間を気にせず自由に移動できる」と気軽な気持ちで借りてみたところ、すごく便利で、何より楽しかった。京都から帰ってすぐに自転車を購入し、通学で使うようになりました。
そこから自転車の魅力に引き込まれ、どんどん行動範囲が広がっていきました。東京から京都まで3日間かけて走破したこともあります。各地のサイクリングのイベントにも参加するようになり、次第に「サイクルイベントを主催する側になりたい」という気持ちが芽生えてきました。就職活動をし始めた大学3年生の1月頃です。
イベントの主催者について調べていたところ、ルーツ・スポーツ・ジャパン(以下、RSJ)に目が留まりました。当時RSJは、新卒採用はもちろん、アルバイトの募集もしていませんでした。採用されるかどうかは未知数でしたが、とりあえず行動しようと思い、一方的に履歴書を送付してみたんです。
すると、会社側に熱意が通じたのか、面接に進むことに。結果、アルバイトとして受け入れてもらえることになりました。アルバイトでは雑務が中心ながら、自転車に関わる業務に携わる面白さを感じ、そのまま正社員として入社を決意しました。
今の主な業務は、サイクリングコースの造成です。アルバイトで入った時期はちょうど期間型イベントのアプリ事業が始まるタイミングで、アプリに掲載するサイクリングコースを設計する必要があり、アルバイトの自分もその業務に関わらせてもらえることとなりました。自転車で走ることが仕事になるなんて思ってもみなかったので、嬉しかったですね。
コースクリエイターの主な業務は、イベントに協賛してくれる企業や自治体の要望に応じながら、参加者が安全かつ楽しく走れるコースを設定することです。クライアントが指定する発着地点や、参加者が立ち寄るポイントを確認し、実際にその地域を自転車で走りながらコースを検討します。
この時に大切なのは、「誰が走るか」を念頭にコース設計をすること。観光がメインのイベントなら、初心者でも走りやすく、風景が楽しめるようなコースにします。一方で、本格的なサイクリストが走るレース系のイベントなら、達成感を味わえるよう少し難易度を上げたコースにすることを心がけます。私自身がサイクリストだからこそ、参加者の気持ちに寄り添ったコース設定ができるのかなと思っています。
コース造成以外の業務として、全国各地で開催する「チャレンジデー」というイベントの企画と運営もしています。チャレンジデーとは、期間型イベントの開催期間中に、数日間だけ開催する50〜100名規模のリアルイベントです。チャレンジデー運営も含め、年に70〜80回ほど地方に出張しています。イベントは観光地で開催することが多いので、おかげで全国各地の観光地は概ね制覇しましたね。
この仕事のやりがいは、自転車の魅力が広がってサイクリストが増えていくことと、それによって地域活性化に貢献しているという実感を得られることです。イベント参加者から「前回のイベントが良かったから、今回は知り合いを連れてきました」と言われたり、クライアントから「この拠点に自転車で訪れる人が増えました」という声をいただいたりするのが、何よりも嬉しい瞬間です。
また、私が育成に関わったサイクリングガイドが、実際にガイドとして活躍している姿を見るのも、大きなやりがいとなっています。RSJではサイクリングガイドの卵を養成する講座を全国で実施していますが、その業務も担当しています。自分自身も入社後にJCGA公認サイクリングガイドの資格を取得しました。自転車の魅力を伝えるガイドが増えることで、さらに多くの人に自転車の魅力が伝わることを願っています。
出張が多いので、周囲からは「プライベートの時間が取れないのでは?」と心配されることもありますが、この働き方が自分には合っています。もともと仕事とプライベートの境界線を作りたくないタイプですし、コース造成の仕事はとても楽しく、「サイクリストを増やす」という目標に近づけている実感があります。仕事とプライベートがつながっているので、むしろとても充実した日々を送れていますね。
私は社内で最もサイクリストの目線を持っていると自負しているため、参加者の立場になって考えることを大切にしています。サイクリストの目線を生かして事業につなげる工夫もしています。例えば、沖縄で行われるイベントでは「沖縄まで自転車を運ぶのが難しい」という声をよくもらっていました。そこで試みたのが、自転車輸送サービスです。イベント前に輸送業者が参加者のご自宅まで自転車を引き取りに伺い、沖縄まで輸送し、イベント終了後はまたご自宅まで届ける。参加エントリーに希望者のみ付帯させる形でこのサービスを提供したところ、とても喜ばれました。
コロナ禍を経て、サイクリングのイベントは徐々に広がりを見せ、今や全国でイベントを開催しています。新たなコース造成や造成したコースを使ったイベントのご依頼も増えている状況です。そうした全国からの声にお応えするためにも、今後はコース造成を手伝ってくれるサポーターを増やしていきたいと考えています。全国にサポーターのネットワークを作るイメージです。
イベントを開催する地域のことを一番知っているのは、地元のサイクリストたちです。平日と休日ではどのように交通量が変わるのか、より景色を楽しめる時期はいつなのかなど、地元の人しか知り得ない情報をキャッチアップしたうえでコース造成ができれば、イベントの体験をさらに向上させることができます。まだまだ構想の段階ではありますが、全国のサイクリストたちが情報を共有できるプラットフォームを作るなど、今後はネットワークの構築にチャレンジしたいですね。
RSJには、新しいアイデアを事業にしていきやすい環境があります。「これがやりたい」という強い思いがあれば、年齢や社歴に関係なく、思ったよりも早いタイミングで任される会社だと実体験からも感じます。「自転車を楽しむ人を増やし、地域を盛り上げる」という目標に向かって、楽しみながら頑張れる仲間が増えたら嬉しいです。
【聞き手・執筆/落合真彩(フリーライター)】