

YAMAMOTO MISORA山本美空
小学生の時に、スポーツをきっかけに人の輪が広がった経験を持つ山本美空。早稲田大学でスポーツツーリズムを学んだのち、ルーツ・スポーツ・ジャパンに入社。スポーツが持つ可能性を信じて行動し続け、入社3年目からプロジェクトマネージャーという重要な役割を担っています。スポーツツーリズムへの思いやプロジェクトマネージャーの業務について聞きました。
これまでの人生で、スポーツをきっかけとして人や地域とのつながりができ、日々が豊かになる経験をしてきました。原点は、小学生の頃。親の仕事の関係で韓国に住み始めた私は、韓国語が分からない中で、現地の子どもたちが当たり前のように通っていたテコンドー道場に、私も通い始めました。
韓国ではテコンドーが盛んで、道場には老若男女が集まります。通い続けるうちに自然と友人が増え、練習帰りによくご飯を食べに行ったのを覚えています。私はテコンドーを通して、「言葉が分からなくてもスポーツを通せばいろんな人とコミュニケーションが取れるんだ」ということを知り、スポーツの素晴らしさを感じました。日本に帰国してからも、テコンドーを通して様々な国の人との交流があり、今も縁は続いています。テコンドーという軸を持つことで、私の世界は確実に広がりました。
スポーツの可能性をさらに探求したいと考え、大学ではスポーツ科学部に進学しました。そして、「スポーツで人や地域をつなげたい」という思いでスポーツツーリズムを専攻。卒業後もスポーツツーリズムに関わりたいと思い、観光業界を中心に就職活動を始めましたが、当時はちょうどコロナ禍。観光業界は大ダメージを受けていたんです。スポーツを軸にもう一度就職活動を見直したタイミングで出会ったのがルーツ・スポーツ・ジャパン(以下、RSJ)でした。
RSJの「日本にスポーツを根づかせる。」というミッションに共感し、RSJ SPIRITS(私たちが大切にする5つのこと)の一つである「直接ふれること」「心を動かすこと」に、とても魅力を感じました。私はリアルな体験を通して、直接ふれたり感じたりするのが好きで、面接を受ける中でもミッションやSPIRITSを貫いている会社だと感じ、入社を決めました。
入社してからはまず、カスタマーディレクターという仕事に就きました。主にイベント参加者の窓口となるポジションで、イベント公式Webサイトの準備、問い合わせ対応、エントリーの管理、参加特典の企画・準備、そしてイベント当日の受付業務など、参加者と関わることが最も多いポジションです。イベント運営を手伝っていただく外部スタッフへの指示も行いながら、多くの人が関わるイベントの中心になってイベント運営とはどういうものなのか、一から学ばせてもらいました。
2年目からは、徐々にコンテンツ企画の中身を設計するようになり、3年目から今の仕事であるプロジェクトマネージャーを担当しています。プロジェクトマネージャーの主な仕事は、イベント全体の進行管理と予算管理です。社内外の多くの関係者と調整しながら、参加者にとって魅力的なイベントになるように企画を練り上げ、あらゆる面でのマネジメントを行います。多くの人が関わる中で進行を管理していくのは簡単なことではありませんが、日々勉強しながら邁進中です。
イベントは、大きく分けて2種類。1日限定の「単日型」と、数ヶ月単位で続く「期間型」があります。それぞれ進行の仕方も予算の決め方も全く違います。「単日型」は毎年恒例になっているイベントも多いのですが、「期間型」は不定期で、自治体と連携して進めることが多く、地域性を大切にしながらその時の“トレンド”も意識して企画をするようにしています。
入社1年目に担当したイベントは、コロナ禍ということもあり自転車とキャンプを組み合わせたものに。開催地の広報誌でも紹介された。
私が最も大切にしているのは、イベント参加者が「また今度ここに来たい」と思えるような企画にすることです。スポーツツーリズムの目的は「地域に人を呼び、地域の中で人を動かす」こと。一度参加して終わりではなく、継続して訪れるきっかけになるようなイベントにしたいと常々考えています。
RSJでの仕事の魅力は、スポーツを通じて人と人、または人と地域が出会うという価値をダイレクトに感じられることです。参加者から「イベントがあったから初めてこの地域に来ました」「知らなかったお店に行くきっかけになりました」というコメントをいただくと、とてもうれしく思います。またプロジェクトマネージャーという立場だからこそ、参加者だけではなく、地元の店舗・企業の人が喜ぶ姿を間近で見られることに、大きなやりがいを感じます。
たくさんの人に関わる立場だからこそ大切にしているのが、「人間味のある仕事」をすることです。完璧にできているとは思っていませんが、たとえばメールのやりとり1つとっても、定型文ではなくて自分の言葉で表現したり、一歩先を読んで相手に必要な情報を渡すように心がけたり、常に相手のことを考えながらコミュニケーションを取るようにしています。一方で、丁寧にしすぎると時間が足りなくなってしまうので、丁寧さと効率化のバランスは今の課題です。
イベントの開催時間が早く、特に自転車のイベントは朝5時のスタートといったケースも珍しくないので、起床するのは3時といったこともよくあります。その意味では、体力的に大変だと思ったことはありますが、苦とは感じていません。そう捉えられるのは、私の根底に「スポーツツーリズムに携われている喜び」があるからだと思います。スポーツを軸にして多くの人と関わり、1つのイベントを作り上げていく。そんな経験は他ではなかなかできないと思うので、本当に恵まれた環境ですね。
当面の目標としては、プロジェクトマネージャーとして、より円滑なイベント運営の実現を目指していきます。プロジェクトマネージャーは立場的に情報が集約されるのですが、その情報を自分だけで持ってしまうと、他の方々との連携がうまくいきません。極端に言えば、たとえ私がイベント当日にいなくても滞りなく進行できるよう、日ごろからチーム内で情報をしっかりと共有していきたいと考えています。
中長期的な目標は、インバウンド関連のイベントを作っていくことです。インバウンドの方々に対して自転車で地域を巡るツアーを提供するようなことをイメージしています。これは入社時からの目標なのですが、たとえばレンタサイクル会社との連携、保険、言語など、乗り越えなければならない課題がたくさんあります。
その足がかりとして、日本に住んでいる外国の方々に向けたイベントを企画したいと考えています。私自身が韓国に住んでいた時にスポーツで救われた経験を生かしたいですね。幸いなことにRSJは、社員の意見や提案を積極的に聞き入れ、実現に向けて後押ししてくれる環境です。これからも自分の目標に向かって、積極的に行動していきたいと思っています。
【聞き手・執筆/落合真彩(フリーライター)】