大会が続くことは、地域の誇りが続くこと|RUN NEXTが描く、ランニングイベントの次のかたち

大会が続くことは、地域の誇りが続くこと|RUN NEXTが描く、ランニングイベントの次のかたち

記録を競うだけでなく、その土地を旅するように走りたい。そんな風にランニングの楽しみ方が広がっている一方で、地域で長く親しまれてきた大会の多くは、担い手や運営の先行きに不安と悩みを抱えています。

この状況を“機会”と捉え、ルーツ・スポーツ・ジャパン(以下、RSJ)が立ち上げたランニングイベント支援サービスが『RUN NEXT(ランネクスト)』です。これは、RSJの中心的な事業であるサイクリングイベント運営で培った地域づくりの知見を、ランニングにも広げる取り組みでもあります。RSJが調査やデータをもとに地域を支えてきた歩みは、先に公開した記事「サイクリスト国勢調査」でも紹介しています。代表取締役の中島祥元と、プロモーション責任者の西川晃伸に、RUN NEXT立ち上げの経緯や想いを聞きました。

インタビュー対象
・中島祥元(株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン 代表取締役)
・西川晃伸(株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン RUN NEXT プロモーション責任者)

今、地域のスポーツイベントで起きていること

RSJは、自治体とともにサイクリングをはじめとするスポーツイベントを各地で開催・運営してきました。自ら体を動かす「する(DO)」スポーツで人と地域の交流を生み、全国に人の流れをつくる。こうした考え方のもとで、ランニングにも創業当初から取り組んできました。

RSJが改めてランニングへ向き合ったのには、地域からの声がありました。全国490を超える自治体との協働のなかで、現場の困りごとが声となって届くようになったのです。

「私たちがサイクリングのイベントで関わっている地域では、地元でランニングの大会も開かれていることが多いんです。そうした地域から、この先どう大会を続けていくか、運営に悩んでいるという声が、自治体を通じて届くようになってきました」(中島)

株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン 代表取締役 中島祥元
株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン 代表取締役 中島祥元

地域活性化を長く手がけてきたRSJにとって、これは見過ごせない課題でした。長くスポーツ大会の運営に携わってきた西川は、現場が抱える悩みをこう語ります。

「まずは、人的リソースの課題です。ランニングイベントを運営しているのは自治体や地元団体が多いのですが、運営の担い手や当日のお手伝いの方の高齢化が進み、人手が足りなくなっています。加えて、長く続いてきたがゆえに前年踏襲になりやすく、外から人を呼び込む発信も、なかなか進んでいない地域が多いという点です。30年、40年と続いてきた大会ほど、このような状況になってきています」(西川)

株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン RUN NEXT プロモーション責任者 西川晃伸
株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン RUN NEXT プロモーション責任者 西川晃伸

こうした課題は、大会の存続に直結します。

「表向きは別の要因がきっかけに見えても、その裏で人手の問題が重くのしかかっているケースが多い」と中島も話します。地域にとって大切な大会が、支える人がいないという理由で静かに消えていくという危機感があったのです。

課題を「資産」と捉え直す。RUN NEXTが提案する、大会の価値の高め方

強い課題感を語る一方で、中島はこの状況を悲観していません。前向きに捉えられるのには、2つの視点があるからです。

一つは、長く続いてきた大会そのものを、大きな資産として捉え直す視点。

「民間企業が新しくイベントを立ち上げようとすると、公道の規制や公園のイベント利用はハードルが高く、開催できる会場は限られています。ところが、地方自治体が長年続けてきたランニングイベントなどは、道路の封鎖も警察の同意も、住民の合意もすでに取れています。こうした許可や合意が整った開催の場を持っていること自体に、とても高い資産性があると私たちには見えるんです」(中島)

しかし、「その資産が、まだ生かしきれていない」と中島は言います。

「大会という『場』があることは、そこに人が集まり、外から人が訪れる機会がすでにあるということです。この機会の生かし方によって、実はいろいろな伸びしろが見込めるんです。一つは、参加費や協賛のあり方を見直して、大会そのものの収支を健全にしていくこと。もう一つは、参加者が地域を歩いて、何かを食べたり買ったりして、『また来たい』と思ってもらえるような、大会の外側にある地域との接点を増やしていくことです」(中島)

参加費や協賛などで収支構造を最適化することで、担い手の負担を外部に委ねる原資が生まれ、大会そのものの持続可能性が高まります。それに加えて、大会をきっかけに地域を周遊してもらう仕掛けや、地元の人たちとの接点を増やす工夫をすれば、参加者を「その地域のファン」に変えていくこともできます。RSJは、この両方を同時に高めていくことで生まれる、“大会を起点にした地域活性化”を描いているのです。

もう一つの視点は、ランナーニーズの変化です。

「旅ランという言葉も出てきたように、記録を狙うだけでなく、その土地そのものを楽しみたい、敷居の低いファンランニングを楽しみたいといった層も増えています。その土地ならではの魅力を引き出したランニングイベントをつくれば、多様なニーズにも応えられ、地域の資産としてもさらに良いものになるはずです」(中島)

こうした視点を踏まえて、RSJは一つのサービスとして形にしました。それが、2026年春に立ち上げたランニングイベント支援サービス『RUN NEXT(ランネクスト)』です。その中身を、中島はこう説明します。

「私たちが目指しているのは、大会の価値そのものをアップデートすることです。収支の構造から集客方法、当日の運営までをリニューアルし、大会の財源の獲得までを支援します。長年続いてきた大会の良さは残しながら形を変えていくという考え方です」(中島)

カメリアマラソンで実証。地域の温かさを残しながら、さらなる活気づくりを

RSJがサイクリングの領域で積み上げてきたものは、ランニングの現場でそのまま生きています。

「サイクリングもランニングも、『道』を使うイベントだという点は共通しています。コース管理、参加者さんへの対応、申し込みから当日までのやり取り、物品の整理などはほぼそのまま転用できます。しかもサイクリングと比較すると、ランニングのほうがコンパクトで、実は当日の運営はやりやすい部分もあるんです」(西川)

来た人に帰りにお店へ寄ってもらう仕組みや、大会をきっかけにした地域の周遊など、その土地を楽しんでもらう設計思想も、サイクリングで培ったものを活用。さらにRSJには、調査やデータをもとに地域へ施策を提案してきた強みもあります。その土台は、先に公開した記事『サイクリスト国勢調査』で詳しく紹介しています。

その提案力が実を結んだ一例に、伊豆大島カメリアマラソンがあります。RSJが参画する前年までは、参加者数は定員の8割ほど。しかし、RSJが集客プロモーションとサイトの刷新に入った年からは、締切前に定員へ達したといいます。

「既存のWebサイトは必要事項が並んだだけの簡素なものでした。そこでサイトをリニューアルし、外部から来る人でも参加できるというメッセージを大きく打ち出す形に変えました。会場の伊豆大島までは船や飛行機が必須となる点がネックになる方も多いので、都心からのアクセスも丁寧に案内しました」(西川)

さらにSNSを活用したデジタルマーケティングの手法も導入。その結果、島外からも参加者が集まり、以前より大幅な増員につながったのです。

「大島町の担当者からは『こんなに増えるんですね』と驚かれましたね。広報PRを改善しただけで、これだけ変わるのか、と衝撃を受けたようでした」(中島)

デジタル施策で集客数を伸ばす一方で、RSJは運営の中にあるアナログの良さも大切にしています。

「一番地域の温かさが伝わるのは、直接接することのできる当日です。そのため受付の地元の方の声かけや、沿道の応援、休憩所での地元ならではの振る舞いなどは、できる限り地元の方々にお願いしています。そこに至るまでの数か月前からの準備やマニュアルづくりは、私たちが引き受けるという分担です」(西川)

地元の人たちが手づくりで支えてきた温かさは残し、運営の負担だけを軽くする。要所にプロが入ることで、地域の方々だけで抱えていた部分が軽くなっていくといいます。

地域と歩む、これからのランニングイベントづくり

では、RUN NEXTを通してRSJは今後、どのように地域と関わっていくのか。中島は「大会の今後がまだ何も決まっていない段階からでも相談してほしい」と呼びかけます。

「地域の良さを残しながらランニングイベントをリニューアルしていく、というRUN NEXTの考え方に共感していただけるなら、どんな段階からでも声をかけてほしいです。今あるものを生かして、新しい価値を一緒につくっていくような取り組みとして、ご一緒できたら嬉しいですね」(中島)

RSJは、単なる一受託者としてではなく、共催者やパートナーという立場に立って地域とともに大会を育てることを大切にしています。これはサイクリングでも貫いてきた考え方で、現場で地域とともに動く西川も、こうしたパートナーとしての関係だからこそいい大会になると実感しています。

「担当者の方の熱量が高く、かつ私たちに対してもパートナーとして一緒につくり上げていきましょう、という関係のほうが、やっぱりいいイベントができるんです。同じ方向を向いてくださる方々と、ぜひ一緒に新たなランニングイベントをつくっていきたいですね」(西川)

最後に、RUN NEXTを通じて実現したい未来を中島はこう話しました。

「RSJには、スポーツを通じて人と地域の交流が生まれて、する人も地域の人も、両方が喜んでくれる機会を日本中につくり出したい、という思いがあります。休止や中止に追い込まれかねない大会が、新たな人が訪れたり、地域のファンが増えたりする機会に生まれ変わり、持続可能になっていく。サイクリングで起こしてきたポジティブな循環を、ランニングでも各地で生み出していきたいと思っています」(中島)

大会が続いていくことは、その地域の誇りが続いていくことでもあります。あなたの地域で長く続いてきた大会も、ここから次の一歩を踏み出せるかもしれません。その先には、どんな景色が待っているでしょうか。

関連リンク
RUN NEXTの詳細・大会運営のご相談はこちら:https://roots-sports.jp/lp/running/

*こちらは「スポーツの力を社会のために」をテーマにしたWEBメディア「Sports for Social」との連動記事です。Sports for Socialの掲載記事はこちら。
https://sports-for-social.com/sports/rsj-run-next/