オリンピックのレガシーをまちの力に。自転車が結んだ相模原とツアー・オブ・ジャパンの歩み

オリンピックのレガシーをまちの力に。自転車が結んだ相模原とツアー・オブ・ジャパンの歩み

東京2020オリンピックで自転車ロードレースのコースとなった神奈川県相模原市。その経験を次に活かしたいという市の意志で、2021年からは国際自転車ロードレース『ツアー・オブ・ジャパン(以下、TOJ)相模原ステージ』を誘致。今では300名を超えるボランティアや地元企業等の協賛も集まる大会になっています。

大会を運営する一般財団法人日本自転車普及協会とルーツ・スポーツ・ジャパン(以下、RSJ)への取材をまとめた前編に続き、後編となる本記事。2026年5月30日に6回目が開催されるTOJ相模原ステージについて、相模原市スポーツ推進課の五本木さん・今木さん、そしてRSJの中島さん・磯貝さんに話を聞きました。

インタビュー対象

  • 五本木修さん(相模原市 市民局スポーツ推進課 課長)
  • 今木優里さん(相模原市 市民局スポーツ推進課 主任)
  • 中島祥元(一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン 代表理事)
  • 磯貝海斗(一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン)

(写真左から)今木さん、五本木さん、中島さん、磯貝さん

レガシーを次に活かす。相模原市がTOJを選んだ理由

——相模原市とツアー・オブ・ジャパン(TOJ)のつながりは、どんな経緯で生まれたのでしょうか。

相模原市 五本木)東京2020オリンピックの準備をしていく中で、自転車に関するさまざまな機関に情報収集やアプローチをしていました。その過程でTOJを運営している日本自転車普及協会にお伺いする機会を得て、「神奈川県内でステージを開催したい」というご意向があることを知りました。
一方、市としてはオリンピックで培ったノウハウや人的・物的資源を、レガシーとしてスポーツ振興につなげていきたいと考えていました。そのレガシーを活かす場の一つとして、TOJ相模原ステージの実現を目指すのがいいのではないか。そう考え、TOJ誘致に向けても動き出しました。

写真提供:TOJ組織委員会

——オリンピックの舞台には、そもそもどういった経緯で選定されたのですか。

相模原市 五本木)東京2020の自転車ロードレースのコース設定については、当初いくつかの案が検討されていたようです。皇居周辺を走るルートなどもあった中で、近隣自治体とともに働きかけを行い、最終的に相模原を通るルートに決定されたと聞いています。その経験と実績があったからこそ、TOJの誘致へとつながっていったと思っています。

——第1回大会は2021年、オリンピックの直前という時期でした。

相模原市 五本木)本来はオリンピックの翌年として2021年にスタートするものでした。しかし、オリンピックが1年延期になったため、思いがけずオリンピック直前の5月にTOJの方が先に開催することとなり、当時はかなり大変だったと思います。

RSJ 中島)RSJが相模原ステージの運営に関わり始めたのは2022年からです。2021年はTOJ全体の運営として関わっていたので、当時の苦労はお聞きしていました。2026年でTOJ相模原ステージは6回目、弊社の関わりは5年目。さまざまな苦労を乗り越えた積み重ねが今のステージを支えていると感じています。

写真提供:TOJ組織委員会

橋本から宮ヶ瀬湖へ。「都市と自然のベストミックス」が生む観戦体験

——相模原ステージのコースは、どんな特徴がありますか。

相模原市 五本木)「都市と自然のベストミックス」というのが、相模原ステージの一番の魅力です。橋本は本市でも大きな市街地のひとつで、企業・店舗・マンション等が集まるエリアで、現在、リニア中央新幹線新駅の工事が進められています。そこからスタートして宮ヶ瀬湖に向かって進んでいくにつれ、緑豊かな山間部へと移り変わっていきます。
フィニッシュ会場は鳥居原ふれあいの館、串川橋から7周半走る形になっていて、宮ヶ瀬湖を望む周回コースです。最後まで展開が読めない熱い駆け引きが毎年繰り広げられていて、選手の息遣いを間近に感じられる場所です。車と同じくらいの速さで自転車が目の前を一気に駆け抜けていく、そんなプロのスピードと迫力は、忘れられない光景になると思います。

写真提供:TOJ組織委員会

——山間部のコースは、サイクリストにとって魅力的な場所でもあるんでしょうか。

相模原市 五本木)坂が多いエリアでもあるので、ある程度経験を積んだサイクリストが「フラットな道では物足りない」と坂を求めて来られるとも聞いています。都心から片道100キロ足らずという距離感で、ロードバイクで来られる方も多くいます。

RSJ 中島)相模原市さんはオリンピックのレガシーとしてTOJを誘致しながら、大会以外のサイクルツーリズムの推進も同時に進めています。「このコースを走ってみたい」と大会以外の日にも足を運んでいただけるサイクリストが増えていくことと、大会観戦に来てもらうことが両輪になって、地域が元気になっていく。相模原ステージでは、そんな好循環が生まれてきていることを実感しています。

写真提供:TOJ組織委員会

ボランティア300人超。自転車ロードレースが相模原に根付きつつある

——6年が経ち、TOJは地域にどう根付いてきたと感じますか。

相模原市 五本木)スポーツには「する・見る・支える」という3つの関わり方があると言われますが、この大会にはその3つがすべて関わっていると思います。
「する」の面では、大会コースを実際に走りに来るサイクリストがお越しになりますし、フィニッシュ会場では子ども向けに自転車体験教室も併せて開催しています。また、スポーツの国際大会を相模原市で定例的に行っているのはTOJだけで、それを市内で「見る」ことができる価値は大きいと思っています。

写真提供:TOJ組織委員会

相模原市 今木)「支える」という面では、TOJ相模原ステージは300名超の市内外から集まったボランティアの皆さんに支えていただいています。公道を使用するような大会は、ボランティアの方々の力なしには成り立ちません。
例年お申し込みいただいているリピーターのボランティアさんもいますし、協賛企業が社員ぐるみでボランティアに参加してくださるケースも出てきました。協賛企業の方々にも支えていただき、そこから生まれるつながりも大会の財産になっています。そういった動きの中で、TOJが市内にじわじわと根付いてきているなと感じます。

TOJだけじゃない。スポーツ全体でまちを元気にする相模原の取り組み

——TOJの開催以外にも、自転車やスポーツを活用した地域振興の取り組みがあると聞きました。相模原市 今木)市内、とくに山間部の観光スポットや地元のお店をつなぐサイクルコースのPRや、サイクリストが立ち寄りやすいようサイクルラック等の整備を進めています。
またスルガ銀行さんと自転車振興に関する協定を結んでおり、相模原市内を巡る一般参加型のライドイベントも実施しています。「TOJで知った相模原のコースを、次は自分で走ってみたい」という方が来てくださることを期待しています。

写真提供:TOJ組織委員会

相模原市 五本木)自転車以外でも、市内のスポーツチームや個人アスリートをホームタウンチーム、ホームタウンアスリートとして認定し、連携してスポーツ振興やシティプロモーションに取り組んでいます。市内の施設で練習していたスケートボードの吉沢恋選手がパリ五輪の金メダリストになったことは、市としてとても誇らしいことでした。
ボクシングでは、相模原市ゆかりの中谷潤人選手が世界タイトルをかけて、お隣の座間市出身の井上尚弥選手と対戦しました(2026年5月2日実施)。その対戦にちなんで相模原市と座間市が連携し、両市の市長も参加した交流イベントを開いたりもしました。
スポーツがまちをまたいだ交流のきっかけになるといったことも含めて、スポーツを通じて相模原市を元気にしていく活動を、さまざまに積み重ねているところです。

——2026年の相模原ステージの見どころと、観戦に来る方へのメッセージをお願いします。

相模原市 今木)スタート会場の橋本公園前では、全選手が揃い、リラックスしている様子などを間近で見られます。フィニッシュ会場の鳥居原ふれあいの館では、飲食や協賛企業の出店もあって、お祭りのような感覚で楽しんでいただけます。実行委員会が用意する無料シャトルバス(※2026年大会は申込受付終了)を使えば、スタート地点とゴール地点をはしごすることも可能です。

RSJ 磯貝)スタートからしばらく続く市街地区間はレースではなく「パレード走行」となるので、選手がリラックスしている様子を間近に見られます。そして途中からレーススタートになると、その瞬間に雰囲気が一変。市街地の面白さと周回の迫力、一日で両方体験できる相模原ステージの醍醐味を感じていただきたいですね。

相模原市 五本木)周回コース沿いには、地元の方々が主体的に立ち上げてくださった観戦スポットが2か所あります。選手たちのハイスピードを道幅の広い場所で見られる「串川地域センター前」と、フィニッシュ直前の上り坂付近で選手の息遣いや最後の駆け引きを間近に体験できる「鳥屋地域センター前」です。
地域の方々がつくってくれたこの場所が、毎年賑わっているのがうれしいですね。フィニッシュ会場では子ども向けの自転車体験教室や出店ブースを巡るスタンプラリーもあるので、ぜひご家族でお越しください。

RSJ 中島)道全体を使った国際ロードレースというのは、本当に限られた機会です。スポーツに関心のある方はもちろん、まちづくりや地域のスポーツ活用に関心のある方にも、現地でその空気を感じていただきたいと思っています。

【大会情報】
ツアー・オブ・ジャパン2026 AMANO相模原ステージ

2026年も日本最大の国際ロードレース『ツアー・オブ・ジャパン2026』。熱狂の相模原ステージが今年も開催されます!是非現地で選手たちの“熱”を体感してください!

開催日:2026年5月30日(土)
スタート:橋本公園前
フィニッシュ:鳥居原ふれあいの館
公式サイト:https://www.toj-sagamihara.com/

写真提供:TOJ組織委員会

*こちらは「スポーツの力を社会のために」をテーマにしたWEBメディア「Sports for Social」との連動記事です。Sports for Socialの掲載記事はこちら。
https://sports-for-social.com/special/rsj-toj-sagamihara/