スポーツをきっかけに人と地域の交流を生み出し、日本を元気にしたい【代表メッセージ】

スポーツをきっかけに人と地域の交流を生み出し、日本を元気にしたい【代表メッセージ】

2009年の創業から15年以上、サイクリングやランニングを通じたスポーツツーリズムで地域活性化に取り組んできたルーツ・スポーツ・ジャパン(以下、RSJ)。代表取締役の中島祥元が語る創業の背景、「心まで動かせ」のミッションに込められた真意、組織の成長とともにさらなる挑戦を続けるRSJの原点とは?

日本中に「根」を張るようにスポーツを広げていく

「日本に スポーツを 根づかせる」=「ルーツ・スポーツ・ジャパン」

ビジョンと会社名になったこの言葉の発端は、2009年の元日。独立を決意し、富山県高岡市の実家で会社名を考えていたときのことです。特別な理屈があったわけではありませんが、ふっと頭に降りてきた言葉を、社名にしました。

今、RSJは自転車やランニングといった「道」を使うスポーツの機会をつくる活動をしています。日本中に張り巡らされた「道」を舞台に、「根」を張るように活動を広げ、文字通り日本にスポーツを根づかせていく。

創業時に降りてきたこのビジョンの意味を、年を経るごとに深く理解できているような気がします。

創業を支えた2つの軸

創業にあたり、大切にしたい2つの軸がありました。

1つは、スポーツがもたらす心を動かす瞬間を数多くつくっていくこと。私自身、学生時代からスポーツを通じて得られる喜び、気持ちよさ、心が前向きに動く瞬間を数え切れないほど体験してきました。

試合で勝ったり負けたりする中で生まれる感情、チームメイトとのつながり、達成感。これらはすべて、人生を豊かにしてくれるかけがえのないものでした。

この感覚を、もっとたくさんの人に味わってもらいたい。スポーツを通して心が動く瞬間を、日本中につくっていきたい。これが私の根源的な動機です。

2つ目は、地域への想いです。私の出身地である富山県をはじめ、多くの地域が人口減少や活力低下という課題を抱えています。

私の父は現役時代、長く高岡市の商工観光に携わる仕事をしていました。家ではいつも「高岡の観光をどうするか」「北陸新幹線が通ったあと、どんなまちづくりをしていくか」といった話をする父を見ながら、私も自分なりに日本の各地の活性化に貢献したいという想いを抱くようになりました。

自分が信じるスポーツの力を使って、地域を元気にできるのではないか。これが、「スポーツツーリズム×地域活性化」に特化した事業をスタートした背景です。

「スポーツツーリズム」という言葉が一般社会に普及してきたのは、実はRSJの創業より後からです。図らずも、私たちは当初から「スポーツで日本中の地域を元気にする」と、同じような考え方で取り組んできました。

変わらない本質、進化する手段

スポーツがもたらす本質的な価値は、古今東西変わりません。

身体を動かすことで得られる気持ちよさ。人と人のつながりを生み出すこと。これらの価値は、オリンピックが誕生した古代ギリシャの時代から変わることなく存在してきました。私たちが生きている間、その先の100年もきっと変わらないでしょう。

しかし、社会構造の変化によって変わる部分もあります。それは、価値の表現の仕方や届け方などの「手段」です。

わかりやすい例として、コロナ禍での変化があります。それまで私たちは、一度に1000人規模の人が集まる「1DAY型」のイベントを中心に展開してきました。しかし、コロナで多くの人が集まれないという危機に直面したとき、スマホアプリを活用した「期間型」の新しいイベントやサービスが生まれました。

「1DAY型」から「期間型」へ、アナログやオフラインのみからデジタルツールの併用へと、時代に応じて手段を変えながらスポーツの価値を届けています。

スポーツ・地域・交流にコミットする

現在のRSJのミッションは「心まで動かせ」です。これは2018年に当時のメンバー全員で、1年がかりでつくり上げた言葉です。スポーツがもたらす素晴らしい感覚に触れられる機会を日本中につくり出し、地域に人をめぐらせ、人と人、人と地域の交流を通じて日本を元気にする。そんな想いを込めています。

創業時から一貫したこの思いに基づき、今後私たちは「スポーツ」「地域」「交流」という3つのキーワードにコミットしていきます。単にスポーツ愛好家にサービスを提供するだけでなく、地域への貢献や人と人との交流に対しても、同じ重みで取り組んでいくということです。

スポーツイベントの事業は「ビジネスとしては難易度が高い」「利益を出しづらい」と言われることもあります。しかし、たとえ仮に大きな利益を出していくことが難しいとしても、持続可能な形を模索して、関わる人みんながハッピーになりながら、事業として継続発展していくことはできるはずです。またそのためのチャレンジや工夫していく姿勢こそが、私たちが築き上げてきた参入障壁にもなっていると感じます。これまでも様々な新しいことに挑戦してきましたし、その結果としてこれまで40の都道府県でプロジェクトを実施し、年間100以上のイベントを手がけてきています。

業界内でも「チャレンジャー」として活動してきたからこその、知見や関係性の蓄積。それらを活かした、さらなる成長がこれから待っていると考えています。

「あうん」のチームから、高みを見据えた組織へ

RSJは今、新たなステージにさしかかっています。

事業は順調に拡大しており、ありがたいことに自転車イベントやスポーツツーリズム領域では国内でも有数の実績を築くことができています。

これまでは少数精鋭、メンバーそれぞれが「あうんの呼吸」で取り組んできたことも、組織規模が大きくなるにつれて新たな課題が生まれてきました。社員が10数名の頃は自然に共有できていた価値観も、人数が増え、リモートワーク中心になるなどを機に、誤解や認識のずれが起こるのは当然のことです。

そこで2024年頃から、2つの側面で組織強化を進めています。

1つは「基盤を整えること」です。社内の仕組みやルールなどを改めて明文化し、体系化する必要がありました。もう1つは、「目指すべきものを共有すること」です。今のメンバーたちが何を目指し、何を大切にする組織なのかなどを改めて明確にする必要がありました。

2024年は主に前者の基盤整備への注力をスタートしました。2025年からは改めて、価値観やビジョンの再言語化、そして発信に力を入れはじめています。どちらも「ここで終わり」ということはありませんから、今後もじっくり腰を据えて取り組んでいくつもりです。

個人と会社のストーリーの「重なり」を大事にしてほしい

組織づくりで最も大切にしているのは、個人のストーリーと会社のストーリーの重なりを意識することです。

私の場合、中島祥元の人生のストーリーとRSJのストーリーは100%一致しています。これは創業者として当然のことかもしれません。

しかし、メンバーにはそれぞれの人生があり、それぞれのストーリーがあります。大切なのは、RSJという“船”が進む方向と、一人ひとりの人生ストーリーとの重なりをしっかりとつくっていくことです。この重なりが大きく、強ければ強いほど、組織は強固になり、個人も自分の目標を達成できるようになると思うのです。

組織の根底にあるのは「誠実であること」です。「誠実さ」は、行動理念である「RSJ SPIRITS」の1つであり、周囲からもよく言っていただく私たちの特徴でもあります。クライアントに対しても、参加者に対しても、仲間に対しても、まっすぐで丁寧な関係を築いていく。誰に対しても正々堂々とした仕事をする。これがRSJの基本姿勢です。

これからRSJの船に乗ってくれる人にも、ビジョンやミッションにコミットして誠実に行動できることは求めたいと思います。

スポーツ業界にはたくさんの会社がある中で、なぜRSJなのか。DOスポーツ、自転車の普及、ランニングイベント、地方創生、スポーツツーリズム……。どの切り口でも構いませんが、自分なりの解釈で「ここで何をやりたいか」を明確に持っている人と一緒に働きたいと考えています。

私たちが目指すもう一つのことは、DOスポーツの領域で、長く、安定して働ける組織をつくることです。

スポーツの仕事はこれまで、労働環境の未整備や経済性の低さから「長くは続けられない」「若い時しかできない」とも言われがちな構造があったことも事実です。しかし、RSJでは、しっかりと社会に価値を提供しながら、プロとしてその対価をきちんと受け取り、安心して長く働ける環境をつくることを重視しています。メンバーが家族を持ち、幸せな人生を送れる基盤を提供する。それも私たちの責任です。

挑戦はまだ始まったばかり

創業から16年が経ち、これまで約490の市町村でプロジェクトを手がけてきました。しかし、全国には1718の市町村があります。まだまだ拡げていける余白も多いですし、挑戦は始まったばかりとも言えます。

また、現在はサイクリング中心になっているプロジェクトを、ランニングをはじめ、他のスポーツ領域にも広げていきます。より多くの種目を、より多くの地域で、より深くかかわって価値を届けていく。そのために、新たなビジネスモデルの創出にもチャレンジしていきたいと考えています。

「日本にスポーツを根づかせる」というビジョンは、まだ道半ば。その道のりをともに歩んでくれる仲間とともに、一歩一歩着実に前進していきたいと思います。スポーツで人と地域の心をつなぐ――この想いを胸に、これからも挑戦を続けていきます。

【聞き手・執筆/落合真彩(フリーライター)】

●創業ストーリーについてはこちらの記事(note)もご一読ください。
https://note.com/rsjnakashima/n/n432714723216